観光業「需要回復1~2年後」

2020.6.5日本経済新聞 電子版より転載

 全国の主な観光事業者を対象にした日本経済新聞の調査で、客数が8割以上減った事業者が全体の6割にのぼることが分かった。需要が回復するには今後1~2年かかるとの回答も半数以上にのぼった。新型コロナウイルスの影響で国内の移動が減ったほか、外国人の入国規制でインバウンド(訪日客)需要の先行きに不透明感が強いことが響いた。

国土交通省によると、国内客やインバウンドの消費額は2019年に27兆9000億円と5年間で3割増加。地域経済への寄与度も高く、北海道では宿泊・飲食サービス業の生産額が12~17年に10.6%増加し、道内総生産の伸び(8.3%)を上回った。観光業界の低迷が長引けば、地域経済や雇用基盤を揺るがしかねない。

日経新聞は5月末に全国の主なホテルや交通機関、観光施設を運営する129事業者に調査票を送り、103者から回答を得た。

各事業者の施設やサービスの利用者数を尋ねたところ「ゼロ」との回答が11%、前年同期に比べて「9割減」が33%、「8割減」が16%だった。60%の事業者で利用者が8割以上減っており、経営への打撃の大きさがうかがえる。

早期の需要回復には慎重な見方が多い。観光需要がコロナ流行前の水準に戻る予想時期を尋ねたところ、「半年後」との回答はわずか3%。「1年後」「1年半後」がいずれも18%、「2年後」が15%だった。33%は「不明」と回答し、先行きへの不安感が強くにじんでいる。

19年には3000万人を超えたインバウンドが足元でほぼゼロとなったのも、地域の観光業には大きな痛手だ。国連世界観光機関によると、日本の観光国際収入は411億ドル(18年)で10年の3倍に増加。それでも人口が日本の半分程度のフランス(673億ドル)との差は大きく、インバウンドの回復次第では成長の余地を残している。